STORY #01

神さまとの再会

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沖縄の伝統行事の一つとして有名なエイサーの起源は、死者を歓迎する念仏おどりに由来されるという。
私が「413hamahiga hotel&cafe」に家族で出かけた日は、たまたま島のエイサー祭りと重なっていた。
車で行ける離島・浜比嘉島に渡る海中道路に差し掛かると浴衣でめかし込んだ女性や、太鼓の音に浮足立っている様子の若者たちが増えてきた、みんなエイサーを楽しみにしている。
ご先祖さまをお迎えする祭りに老いも若きもない。
私はこの島に生まれたことに喜びを感じる。

お祭り騒ぎと共に浮かれるようにホテルに到着するなり、双子は大はしゃぎでエントランスから続く芝生を転げ回る。

それを見たオーナーは愉快そうに笑いながら、私たち家族を出迎えてくれた。
宿泊する部屋はナンバー01「HUSHI(ふし)」。
沖縄方言で“ふし”は星を表す。なんて素敵な響きの言の葉だろう。

部屋に入ると双子は早速、真っ白な部屋を冒険し始める。
私が真っ先に飛びついたのは部屋の片隅に佇むターンテーブルだ。

昔とりわけ好んで聞いたソウルを選び、回転するターンテーブルに針を落とす。
大きなガラスから見える外の景色はまるで絵画のようで、双子は夫の足元に戯れながら
「窓を開けて」とせがんでいる。

ボリュームを最大限にして窓を開け芝生の庭に双子を放つと、むせかえるような夏の香りが立ち上り、私も双子と一緒にはしゃぎ回る。
目の前に広がる真っ青な空、その空の色を映したように青く澄んで静かに凪いだ海。
昼の長い真夏といえども日は暮れる、私たちは太陽に光を惜しむように芝生を転げまわり、
庭を歩くヤドカリを追いかけ、頭上近くを飛ぶ鳥に驚き、暮れていく夕日に胸を焦がす。

時間を忘れてひとしきり遊んでいると、夕食にオーダーしていたBBQの時間だ。
部屋から続くベランダにセッティングされたBBQセットで、とびきりジューシーな肉を夫が手際良く焼いていく、好奇心いっぱいの双子は何度も火を覗き込もうとするが、
ターンテーブルから流れるリズムに合わせて私が踊ると、双子も私につられて踊り出す。

人生は音楽みたいだ。
イントロ、アップテンポからメロウ、そしてフェイドアウト。
どの場面にもドラマがあり悲哀があり、きっと意味がある。

「焼けたよ。」

香ばしい匂いの肉にかぶりつく、大きな肉を子供たちの口に入るように小さく刻みながら
美味しさを逃すものか!と頬張り、みんな夢中になって平らげてしまった。

夜のとばりが訪れた空には、満天の星。
こんなにゆっくりしたのはいつぶりだろう。
シャワーで汗を流してからゆったりと椅子に腰掛けて、夫婦でビールを飲む。

“この島を夫婦だけでよく訪れたね。”

最初は初日の出を見に夫婦で本島から海中道路を渡って、その年の生まれたての太陽を眺めた。
何度か通っているうちに浜比嘉島は子授けの神様が住むパワースポットだと知って、二人で休みを合わせては願いを胸に秘めて、島を訪れていた。

あぁ、そうか。
私たちはあの頃、願っていた家族になって、この夜空を眺めている。

夫がポツリ

「神様って、本当にいるかもしれないな。」

そんなことを呟くものだから、私は泣けてきた。
これはあの頃、願いが叶わなくて流した涙じゃない、とびっきりの幸せをかみしめる涙だ。
空を仰ぐと部屋の名前と同じ星たちが祝福の瞬きをくれた。

深い眠りについた翌朝。
カーテン越しに差し込む日差しはすでに明るい。

マジキナ イクエ

WRITER

マジキナ イクエIkue Majikina

ローカル雑誌/教育委員会/ソーシャルメディアにて勤務。
向こう見ずな性格故、様々な職を経て2012年、図らずもフリーランスライターとなる。
人やモノの背後にある思いやストーリーを伝えていきたい。

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