STORY #7

【最果てに灯る宿】第4章 リスタートと周年祭

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Vol.4

リスタートと周年祭

2019年1月、私たちは法人を設立し、413を新たに引き継ぐ準備に入った。開業から数年で営業休止に追い込まれた施設を、再び立て直すという挑戦。振り返れば無謀とも言える決断だったが、そのときの私たちに迷いはなかった。むしろ「この場所を自分たちで動かすんだ」という想いが背中を押していた。

その決断を後押しした、忘れられない一日がある。私たちが本格的に413を引き継ぐ前──まだ前オーナーの時代に行われた周年祭のことだ。正確には自分たちの主催ではなかったが、その日の光景は強烈な記憶として刻まれ、後に「この場所なら未来を託せる」という確信へと変わっていった。

ガーデンにはハンドドリップの香り高いコーヒー、スパイスの効いたジャークチキン、冷えた小瓶のオリオンビール。カフェの中では地元のフードベンダーが並び、駐車場にはカクタスのベーグルが彩りを添える。芝生の上ではフラダンサーが舞い、会場全体が祝祭の雰囲気に包まれていった。

日が暮れるころ、レゲエシンガーのムーミンがステージに立つと空気はさらに熱を帯び、続いてモンゴル800のキヨサクさん、ORANGE RANGEさん、そして飛び入りで古謝美佐子さんまでもが参加。沖縄を代表するアーティストたちが、この小さな浜比嘉島に集い、一夜のうちに大きな物語を紡ぎ出した。

私はその場に裏方、仕掛け人として立ち会っていた。観客ではなく、準備や運営の側から見ていたからこそ、「この島には特別な力がある」と確信した。人と人を引き寄せ、音楽や文化を自然と交わらせる磁場のようなエネルギー。それは単なるイベントの盛り上がりではなく、土地そのものが持つポテンシャルの証だった。

庭に焚き火が灯り、三線の音が響く。島の人々も観光で訪れた人も、音楽と食べ物と景色に包まれながら、ただ穏やかな時間を過ごしていた。「浜比嘉島だからこそ、413だからこそ、できることがある」──その実感を得た一日だった。

年が明け、手探りのリスタートが始まった。スタッフの採用や研修、部屋のメンテナンスや備品の入れ替え、庭の整備。ひとつひとつの作業が山積みで、同時に集客のための動線づくりや宣伝も進めなければならなかった。OTAへの登録作業やサイト改修を夜中まで続け、朝になれば庭掃除。まるで「ゼロから宿をつくる」ような日々が続いた。

再オープン初日、最初のゲストを迎えたときのことは今も鮮明に覚えている。東京から来た若い夫婦で、彼らは庭に出てしばらく海を眺めた後、「ここ、本当にいいですね」と静かに微笑んだ。その一言が、これまでの準備のすべてに意味を与えてくれた気がした。

もちろん順風満帆だったわけではない。リスタートから半年も経たないうちに、世界はコロナウイルスという未曾有の危機に直面する。営業もままならず、客足が途絶える中で、私たちはお先真っ暗な状況に放り込まれることになる。

それでも、あの周年祭の記憶は私たちを支え続けた。あの夜の熱気と祝福の空気が、「ここなら、必ずやっていける」という信念を支えてくれたのだ。浜比嘉島が見せてくれた景色と人のつながりが、これから訪れる試練を乗り越える力になると信じていた。

シーサー・ハマ

WRITER

シーサー・ハマSeaser Hama

413hamahiga hotel&cafeの物語を担当する守神 
シーサー浜と申します。
どうぞお見知りおきを。

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