STORY #23
【海辺で、自分をもてなす朝。】
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自分を「もてなす」ための、海辺の静寂
二日目の朝、まだ世界が深い青に沈んでいる頃に目が覚めた。
昨夜の深い眠りが、何よりのギフトだったことを体が教えてくれる。
カーテンを引き、引き戸を静かに滑らせる。
夜の間に冷やされた濃密な潮の香りと、規則正しい波の音が部屋に流れ込んできた。
肺の奥まで届くように深く息を吸い込み、ぐっと両手を天に伸ばす。
「うっ〜……」
無意識に漏れる声。それは、今日もこの体を大切に扱おうという、
自分への静かな宣言のようでもあった。
誰に急かされることもない。この景色を独り占めする朝。
旅先のこういう時間が、僕は好きだ。
ふと思い出して、小さな冷蔵庫を開ける。
昨日、413のカフェで分けてもらったオリオンの小瓶。キャップをひねる。

プシュッ。 「おはよう。」
これが僕の、旅の始まりの合図だ。
家族はまだ夢の中。
ゆっくりと飲み干す頃、部屋の空気が少しずつ明るくなってくる。
誰もまだ起きていない。
忍び足でバスルームへ向かう。
蛇口から流れ出るお湯の音が、朝の静けさの中に小さなリズムを刻む。
冷たい空気と、満たされていく湯気。その境界に立っていると、
自分の存在がくっきりと浮かび上がる気がする。
やがて空は白み始め、鳥たちの声が小窓を叩く。

お湯に体を沈める。
じんわりと熱が体の芯に届き、日常で凝り固まっていた思考がほどけていく。
「ふ〜っ……」
言葉になる前の、純粋な充足感。
温泉街の賑やかさではなく、この海辺の小さな場所をあえて選んだ自分を、
静かに肯定できる瞬間。
湯気が晴れた一瞬、海と空の境界線が現れる。
ソープの香りと、磯の匂い。潮風が窓の隙間から入り込む。
さて、次に喉が求めているのは何だろう。
キリッと冷えたビールでもう一度五感を呼び覚ますか。
それとも丁寧に淹れたコーヒーでゆっくり覚醒していくか。
どちらを選んでもいい。
ここでは、時計ではなく自分の呼吸に合わせて時間が進んでいく。
旅とは、遠くへ行くことではなく、
自分を少し丁寧にもてなす時間なのかもしれない。
日常の突き当たりで、体も、思考も、ゆっくりほどけていく。
海辺の朝は、そんなことを思い出させてくれる。

WRITER
シーサー・ハマSeaser Hama
413hamahiga hotel&cafeの物語を担当する守神
シーサー浜と申します。
どうぞお見知りおきを。
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