STORY #20
【島が好きなもんで!】
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浜比嘉島への45分
北谷から海中道路を抜けて、島の突き当たりへ

プロローグ:島が好きなもんで
島が好きなもんで、と前置きしてしまうと、それだけで話はだいたい通じる気がする。
遠くへ行きたいわけじゃない。
どこか特別な場所を目指していたわけでもない。
ただ、ハンドルを握っているあいだに、少しだけ景色が変わればいい。
そう思っていた。
この日、家族が北谷の街をぶらぶら散策している時間を使って、
私はひとり車を走らせることにした。
目的地を決めたというより、「車で渡れる島」という条件だけが、頭の中に残っていた。
北谷からうるま市の海中道路まで、およそ40〜45分。
沖縄本島の西海岸から東海岸へ、サクッと横断できてしまうのも、
改めて考えると面白い。
第一章:基地の街を抜けて、海へ
北谷を出て、嘉手納方面へ。
米軍基地のフェンス沿いをぐるっと回り、
嘉手納飛行場を横目に見ながら沖縄市知花を抜け、うるま市へと入っていく。
このあたりはYナンバーの車も多く、歩いている人も外国人ばかり、
という光景に出会うことも珍しくない。
両サイドから英語が聞こえてくるような感覚に、やっぱり沖縄だなと思わされる。
走りながら、ふと気づく。
あ、どんどん”下って”いるんだな、と。
うるま市田場のあたりから緩やかな登り坂に入り、アクセルを踏み込む。
グイグイと登りきったと思ったら、今度はまた下り坂だ。
この下りが、なんとも言えずいい。
山と山の間から、少しずつ海が見えてくる。
最初は「見える」というより、「気配を感じる」程度。
それが、降っていくにつれて、だんだんと迫ってくるように感じられる。
視界の奥から、海がこちらに近づいてくる感覚。
緩やかに下りきると、突き当たりに信号が現れる。ここを右折すれば、海中道路方面だ。

第二章:海中道路という名のパノラマ
信号を右折し、左手に海を感じながら、しばらくは海岸沿いを走る。
距離にして3キロほどだろうか。照間の防風林が続く区間を抜けると、また景色が変わる。
視界が一気に開ける。
橋、その奥に見える島々、遠浅で穏やかな海が広がる。
窓を少し開けると、潮の香りと磯の匂いがふわっと入り込んでくる。
ついさっきまでいた北谷の喧騒が、もうずいぶん遠い出来事のように感じられる。
ただ静かで、穏やかな時間が流れている。
やがて左折し、海中道路へ入る。この曲がり角は、
フォイルカイトのスポットとしても知られている。
風のある日には、色とりどりのカイトが空を舞い、
海の上を滑るように進み、時には数メートルもジャンプする。
まさに、この道の”入口”にふさわしい光景だ。
「海中道路」という名前から、海の中を走る道路だと本気で想像していた、
という投稿をSNSで見かけたことがある。
もちろんそんなことはない。
前方にも左右にも、うるまブルーの穏やかな海が広がる、
最高のドライブロードだ。
藪地島と、消える海
右手に見えてくるのは無人島の藪地島。潮が大きく引くと、
ここでは思わず首をかしげたくなるほど海が遠くまで下がるらしい。
あの海水はどこへ行くんだろう、と思うほどに。
しばらく走ると、大きな橋が近づいてくる。夜には電飾が灯り、
海中道路のシンボルのような存在になる橋だ。
その先を下ると、左手にパーキングエリアと道の駅が現れる。
マリンアクティビティを楽しむ人たちの姿や、
時にはカーミーティングなどのイベントも行われている場所だ。
ちょっと寄り道:サバニの博物館
道の駅はさておき、個人的におすすめなのが、建物二階にあるサバニの博物館。
島独特の小型船を展示した空間で、地元の方からも「一度は見たほうがいいよ」と
勧められる場所だ。時間があれば、ぜひ立ち寄ってみてほしい。
第三章:平安座島、そして浜比嘉大橋へ
再び車を走らせ、緩やかなカーブを抜けると、
目の前に最初の島、平安座島が現れる。
両サイドから島が迫ってくるような感覚。
高い山があるわけではないのに、
その緑の塊に思わず圧倒される。
麓には住宅地が広がり、実はこの島全体が石油コンビナートでもある。
空撮で見ると、そのスケールの大きさに驚かされる島だ。
そして、ふと右側へ視線を移す。
三層に分かれたグラデーションの海に浮かぶ、小さな島。
神の島、浜比嘉島だ。
1997年に浜比嘉大橋が架かるまで、島への交通手段は船だけだったという。
名前は聞いたことがあっても、近くて遠い、どこか神秘的な存在だった島。
今では橋で繋がり、車が行き交う様子が見える。
平安座島に入り、二つ目の信号を右折すると、浜比嘉大橋へ。
もうこの時点で、北谷にいたことなどすっかり忘れている。
島が好きな私の気持ちは、完全に最高潮だ。
橋の上で、空と海に包まれる
橋に入ると、空と海に包み込まれるような感覚になる。緩やかな上り坂。
右手には本島と海中道路が見え、「ああ、向こうから渡ってきたんだな」と実感が湧く。
左手には、何層にも重なった海のグラデーションと水平線。
島だ。
そう心の中で呟きながら、緩やかな下りへ入ると、目の前に浜比嘉島が迫ってくる。
その迫力は、まるで映画のスクリーンの中へ吸い込まれていくようだ。
もしここでスター・ウォーズのテーマが流れてきたら、
きっと完璧な没入体験になるだろう、なんてことを考えながら。

第四章:集落を抜けて、島の突き当たりへ
島の右側が浜集落、左側が比嘉集落。浜比嘉島は、
二つの集落から成り立っている。
私はネットで見つけた、浜側の突き当たりにある小さなホテルとカフェ
──413 hamahiga hotel & cafeを目指すことにした。
橋を下り、右折。ここからは30キロ以下で、集落の景色を楽しむ。
右手には漁港と漁船。左手には、赤瓦の家やコンクリートの建物が並ぶ。
昔ながらの食堂の前を通ると、ふわっと天ぷらの香りが漂ってきた。
右側には防風林、左側には集落。防風林の隙間から、時折きれいな海が覗く。
そのたびに、これだよな、と一人でニヤけてしまう。
やがて、白い建物が見えてくる。
島の突き当たりにある、小さなホテルとカフェ。
ナビが「目的地に到着しました」と告げる。
北谷から、およそ45分。
たったそれだけの時間で、こんなにも素朴で、自然に包まれた場所へ来られる。
沖縄という土地の面白さを、改めて思い知らされる瞬間だ。
子どもたちは、整備された観光地で異国情緒を楽しんでいる。
その一方で私は、45分のドライブで、手つかずの自然と大きな空、
何にも遮られないパノラマの海に出会っている。
島が好きな人間には、たまらないロケーションだ。

第五章:413 hamahiga hotel & cafe で出会った景色
「うわぁ、なんだここは!」
スタッフの方が案内してくれる声と重なるように、視界が一気にひらけた。
目の前に広がっていたのは、空と海だけでできたようなパノラマだった。
どうぞ、と促されてテラス席へ向かう。椅子に腰を下ろすより先に、
気づけばスマホを手に取っていた。動画を回しながら、思わず声が漏れる。
すごい。
自分の中から、勝手に出てきた言葉だった。誰かに向けた感想でも、説明でもない。
ただ、見たままの心の声。
数歩先に、海がある海、近い。
カフェの席から波打ち際まで、何歩だろう。
数えられるくらいの距離に、穏やかな水面がある。
透明で、淡く、場所によって色を変えるグラデーション。
その向こうで、さっき渡ってきた海中道路が、
海と空の境界線のように横たわっている。
さらにその奥には、沖縄本島の山並み。石川や金武町あたりだろうか。
輪郭ははっきりしないのに、確かにそこにあると分かる存在感。
左手に目を向けると、平安座島の緑が重なって見える。
そしてポツポツとランダムに点在する岩。

その配置が妙に自然で、「ああ、島に来たんだな」と改めて思わせる。
その向こう側には、かすかにホワイトビーチ。米軍の基地だと分かっていても、
この距離感では景色の一部として静かに溶け込んでいる。
島と島、海と空、そのすべてが、ここでは一枚の風景としてつながっている。
風が吹くたび、テラスに潮の香りが運ばれてくる。
コーヒーの香りと混じり合って、どちらが先だったのか分からなくなる。
その曖昧さが、妙に心地いい。
到着した、というより、ようやく呼吸が合った。
そんな感覚だった。
豆から淹れるコーヒー
心地よい風に身を任せていると、カウンターの奥からコーヒー豆を弾く乾いた音が聞こえてきた。
一定のリズムで続くその音が、不思議と景色とよく合う。
あ、豆からなんだ。
それなら、ぜひ味わってみたい。
軽く手を挙げて、ハウスブレンドをお願いする。
豆は挽くけれど、マシンで淹れるスタイルが多い中、
ここでは一杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れてくれる。
その手間を惜しまない姿勢に、この場所らしい贅沢さを感じる。
都心にいると、コーヒーは「区切り」になりがちだ。
仕事の合間、移動の途中、気持ちを切り替えるための一杯。
でも旅先では違う。待つ時間も含めて、楽しみの一部になる。
それに、この景色だ。悪いはずがない。
海を眺めながらそんなことを考えていると、「お待たせしました」と声がかかり、
コーヒーが運ばれてきた。HASAMIのカラフルなカップに、ソーサーではなくコルクのコースター。
そのカジュアルさが、妙にうれしい。
「お砂糖とミルクは…」という問いかけに、
右手を軽く上げて会釈で返す。今は何も足したくない。
刻々と表情を変える海を眺めながら口にしたコーヒーは、
この日の中でいちばん記憶に残る味になった。
全室オーシャンビューの6部屋
ふと耳に入ってきたのは、スタッフと別のお客さんの会話。
「この奥に、6部屋の宿泊施設があるんですよ」
聞き耳を立てるつもりはなかったが、自然と耳が向いてしまう。
全室オーシャンビューの6部屋。
沖縄ではよく見かける、外人住宅のイメージをベースにしたシンプルな建物。
西向きに建っているため、サンセットがきれいで、その時間に合わせたBBQがおすすめだという。
説明というより、雑談の延長のようなトーン。それがかえって想像力を刺激する。
気づけばスマホで「413 hamahiga hotel & cafe」と検索し、
インスタグラムのアカウントまで辿っていた。なるほど、と思う。
誰にも教えたくない、自分だけの場所にしておきたい。
そんな声が多い理由が、少し分かった気がした。
エピローグ:次は、ここで
次はここで、オリオンを片手にBBQだな。
そう思いながら、目の前の景色を数枚、写真と動画に収めて、妻に送った。
北谷から45分。
車で渡れる、神の島。
島の突き当たりにある、小さなホテルとカフェ。
島が好きな人間には、たまらないロケーションだ。
アクセス情報
413 hamahiga hotel & cafe
沖縄県うるま市勝連浜56
北谷から車で約40〜45分
那覇空港から車で約70分
海中道路経由、平安座島から浜比嘉大橋を渡って右折
駐車場あり
営業時間やご予約については、公式サイトまたはSNSをご確認ください。

WRITER
シーサー・ハマSeaser Hama
413hamahiga hotel&cafeの物語を担当する守神
シーサー浜と申します。
どうぞお見知りおきを。
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