STORY #19

【プカプカ浮かびながら】

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仰向けで海に浮いてる。プカプカ〜って。

視界いっぱいに広がる青い空と、ゆっくり流れていく白い雲。
波のうねりが体をふわっと持ち上げることもあるけど、
この遠浅のビーチは本当に穏やか。

透明度が高くて、下を見れば海底まで見える。

ちょっと流されてるかな?って一瞬思うけど、ここは湾内だから大丈夫。
高波よけがあるから、沖に流される心配はない。

ただひたすら、太陽を全身に浴びながら、ゆっくり呼吸してる。
体のどこにも力が入ってない。肩も、首も、背中も、全部ゆるゆる。
究極のリラックスタイムってこういうことなんだって思う。

このあとはシャワー浴びて昼寝する予定。時計もスマホも見ない。

SUP用のライフジャケット着てるんだけど、それすら忘れちゃうくらい、
このプカプカ〜っていう感覚が気持ちいい。

時々、小さな魚の群れが水面でパシャッて飛沫をあげる。
ああ、ここは本当に自然そのものなんだって実感する。

昨日会った若い女性の話を思い出した。「移住しちゃいました!」って、
キラキラした顔で言ってた人。東京から、ここへ。

その言葉を思い出して、体を起こして、ぐるっと周りを見渡した瞬間。

「そりゃそうだよね」って、思わず声が出た。

この景色。この空気。この静けさ。

ここ、海外じゃないんだよ。国内で、東京から飛行機で3時間もかからない場所。
言葉も通じるし、贅沢しなければ美味しいものもたくさんある。
石垣に囲まれた古民家の宿。
庭先に咲くハイビスカスの赤。遠くから聞こえる三線の音色。

何よりも、この手付かずの自然の中にいると、
あの日々の「やらなきゃ」が、すごく遠くに感じる。

スマホの着信通知。返信待ちのLINE。
インスタの「いいね」の数。

本当に、どうでもよくなってくる。

なんでだろう?

これって、何なんだろう?

住んでる場所の問題? 取り巻く環境? 仕事?

あの、毎日毎日、時間に追われてる感じ。
電車のアナウンス。スマホの振動。
駅や電車の中の、なんかイライラが伝染してくるような空気感。

外国人観光客で溢れかえってる街。

改札を出るだけで人波に揉まれて、
コンビニ寄るのも一苦労。

「なんでここにこんなに人がいるの?」って思っちゃう日常。

都心は、ちょっと異常すぎる。

ここでプカプカ浮いてると、それがすごくよくわかる。

なんか、違和感しかない。あの生活。

気づいたら、だいぶ寝てた

海から上がって、冷たいシャワー浴びて、
冷え冷えのオリオンビール2本飲んだところまでは覚えてる。

目が覚めたのは、レコードプレーヤーの針が最後まで行って、
ブツッ、ブツッって繰り返してる音。
どうやら寝落ちしてたみたい。

何時だろう?って時計を探したけど、やめた。何時でもいいや。

グラスいっぱいの水を一気に飲み干して、
半開きの引き戸を開けてテラスへ出た。

芝生が足の裏にチクチク刺さる。

この感覚、むか〜し昔のおばあちゃんの家を思い出す。
裸足で兄弟や従兄弟と鬼ごっこして、
かくれんぼして。あの頃の光景が走馬灯みたいに蘇って、
ふふッて笑っちゃった。

そういえば、親と従兄弟と田舎へ旅行、よく行ってたな。
あの頃はあっち行ったり、
こっち行ったりと、欲張りな旅行ばっかりだった。
観光スポット全部回って、お土産屋さんも全部チェックして。

初めての沖縄もそうだった。旅行雑誌片手に、
空港からレンタカー借りて、「最初はここ!」
「さ、次行こう!」「アイス食べたい〜」「お腹すいた〜」って。

次の目的地に着いたら車内で寝落ちしてて、
ご飯食べたらまた寝落ちするような。

まあ、子連れのファミリー旅行って今も変わらずそんな感じだよね。

できるだけたくさん見て、
できるだけたくさん食べて、
できるだけたくさん写真撮って。

ただ、今の私は違う。

少し前まではアジアの国を何ヶ所か回ったりもしてた。
バンコク、ホーチミン、バリ。
有名なカフェに行って、映えるスポットで写真撮って、
マッサージして、ナイトマーケット行って。
それはそれで楽しかったけど、帰ってきたらどっと疲れてた。

今はもっぱら「何もしない時間」を求める旅になった。

ご褒美エステも、星付きレストランも、行列のカフェも、興味ない。

ただひたすら、心を休めるための時間が欲しい。

みんな気づいてないだけで、「映え」にも「
リア充アピール」にも、もう飽きてきてるんだと思う。

インスタのストーリーに上げるために旅行してるような感覚。
いいねの数で一喜一憂して、
でも本当に心が満たされてるかって言われたら、わからない。

ただ、何もしない時間って、誰にも刺さらないし、
そもそも発信する必要もない。

日々、人の多い場所に住んでて、情報の洪水の中にいるのに、
なんで休みの旅行まで人の多い場所に行って、
行列に並んで、疲れて帰ることにお金と時間を使ってるんだろうって、
首を傾げちゃう。

滞在中、ドイツから来たカップルと仲良くなった。

廊下やカフェ、駐車場で軽く挨拶する程度の距離感だったんだけど、
お昼にカフェでランチしてる時に、スタッフの人が自然に声かけてくれて。
「よかったら一緒にどうですか?」って。

東京だったら絶対ありえない。
隣のテーブルの人と目も合わせないし、話しかけることもない。
それが普通だと思ってた。

ちょっとした会話が始まって、お互いに意気投合して、
そのままワインを飲んだ。

彼らは3週間の休暇で、日本のいろんな場所を回ってるって言ってた。
3週間。そんなに休めるんだって、ちょっと驚いた。

「日本人は働きすぎだよ」って笑いながら言われて、
何も言い返せなかった。

彼らの話を聞いてると、休暇の捉え方がまるで違う。
彼らにとって休暇は「当たり前の権利」で、誰にも遠慮しない。
仕事のメールもチェックしない。完全にオフ。

私は? 有給取るのにも気を使って、
「すみません」って謝りながら休暇申請して、
旅行中もメールチェックして、LINEの既読つけて。

しゃべった内容は他愛もないことばっかりだったけど、
旅先での出会いってすごくエモい。
そして、こんなふうに自然に人と繋がれる場所があるんだって、
ちょっと感動した。

その夜、部屋から外を見たら、ガーデンのテラスで、
うっすらとランタンを置いて、
オセロを楽しんでる2人の姿が見えた。

静かに寄せては返す波の音。時折、笑い声が混じる。

なんて素敵な光景なんだろう。エモさに程がある。

まるで、さっき思い出した子供の頃のおばあちゃんの家での私たちみたい。

スマホもなく、特別なゲームもない。
ただ、そこにあるボードゲームに夢中になれる無邪気さ。

東京だったら、夜は誰かとディナー行くか、家でNetflix見るか、
スマホ見ながらダラダラするか。
そんな選択肢しかなかった気がする。

なんだろう、うまく言えないけど、
心も気持ちもそうでありたいって感じる夜だった。

シンプルなことに喜びを見つけられる感覚。
それを忘れてたんだって気づいた。

それが、この旅で一番印象に残る記憶になった。

日々の喧騒の中、電車で密閉型のヘッドフォンして
没入感に浸るのも良いけど、
それって結局、周りの雑音を
シャットアウトしてるだけなんだよね。

本当に必要なのは、シャットアウトしなくていい場所。
波の音も、鳥の声も、風の音も、全部心地いい場所。

私はまた、自然豊かな場所で、
こうやってプカプカ〜と浮いていたいって、強く思った。

そして多分、次はもっと長く滞在したい。
1週間とか、2週間とか。

働き方、変えられないかな。

リモートワークとか、ワーケーションとか、
そういうの。

あの移住した女性みたいに、いっそのこと移住するっていう選択肢も、
ありなのかもしれない。

東京に戻ったら、また日常が始まる。

電車に揺られて、スマホ見て、時間に追われて。

でも、今回の旅で何か変わった気がする。

少なくとも、「これが普通」だと思ってたことが、
実は普通じゃないかもしれないって気づいた。

それだけでも、来た意味があったと思う。

シーサー・ハマ

WRITER

シーサー・ハマSeaser Hama

413hamahiga hotel&cafeの物語を担当する守神 
シーサー浜と申します。
どうぞお見知りおきを。

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